VHH抗体について
医薬品開発領域において、「抗体医薬」の製品化が展開されていますが、開発・製造コストが高く、高分子抗体であることから生産性や長期保存性に欠けるなど、解決すべき課題は未だ潤沢に存在します。
この課題解決法の一つとして、ラクダ科動物特有のH鎖抗体を超低分子化したVHH抗体の利用があります。
ラクダ科VHH抗体は開発・製造コストが安い(標的抗原に強く結合する抗体を抗体ライブラリー法により迅速に開発することが可能)、生産性が高い(抗体の生産は大腸菌などの発現系を利用することが可能)、安定性に富む(80度以上の高温に曝されても抗原結合能を維持できる高い安定性を有している)など、多くの利点を有しており、近年このVHH抗体技術に関する特徴を生かした医薬品開発が注目されています。
抗体が使用される産業領域は、創薬・医薬品の他、検査用診断薬や検査機器のセンサーとしての利用があり、医薬品や検査用診断薬は、人に限らず畜産業や水産業にも利用されます。
抗体作製法の比較 |
抗体作製法 |
ポリクローナル抗体 |
モノクローナル抗体 |
ハイブリドーマ法 |
高安定型VHH抗体開発法 |
期間 |
4~12週間 |
16~24週間 |
1~4週間 |
必要抗原量 |
数mg |
数mg |
0.1mg以下 |
動物 |
動物免疫が必要
(動物飼育施設、費用) |
動物免疫が必要
(動物飼育施設、費用)
|
動物免疫不要 |
手法 |
抗血清からの抗体精製 |
ハイブリドーマ作製技術 |
分子生物学的手法技術 |
生産量 |
有限。動物頭数による。 |
無限増殖細胞を使用するので無限 |
大腸菌等を利用した分子生物学的手法により無限 |
安定性 |
生体由来の不安定さがある |
熱に不安定なものもある |
熱・変性剤・pHに対する安定性が高い |
バラツキ |
個体差・ロット差がある |
個体差・ロット差が無い |
個体差・ロット差が無い |
抗体は標的物質(抗原)に対しての特異性が高いことから、医薬品として副作用のリスクが小さいという点で優れており、現在は抗体そのものの開発と、その効力を増強する方向で抗体薬物複合体や二重特異性抗体の開発が精力的に進められています。
しかし抗体の分子量は150,000以上であり、生産には哺乳動物細胞を用いる必要もあり、コストが高い傾向にあります。
また、大型のタンパク質であることからその安定性が悪く、抗体を用いた診断検査薬や工業製品への組み込みにおいても、保存安定性や熱安定性が製品開発の大きなネックになっています。この様な背景から、医療分野以外での抗体の使用は困難でありました。
しかし、これらの課題をクリアできれば、医療分野のみならずその他の分野においても、「特異的に結合する」抗体の特性を「センサー分子」として活用することが可能になります。
弊社で扱う「高安定型ラクダ科VHH抗体」は、この課題をクリアしたもので、テクノロジー・プッシュによるイノベーションに繋がるものです。
弊社では、ラクダ科アルパカのVHH遺伝子を基に、独自の戦略により多様性(レパートリー)を増大させたVHH提示ファージライブラリーを構築し、動物免疫を必要とせずに多様な標的抗原に特異的、かつ、高い親和性で結合するVHH抗体を最短10日程度で単離することができます。
試験管内進化法について
VHH抗体は、安定でかつ安価に大量生産ができ、弊社保有のVHH抗体ファージライブラリーから短い期間で取得できますが、受託においては抗原に結合する抗体作製は当然のこととして、抗体は取得できたものの、それが製品や薬品になるものでないと、意味がありません。
当社では、取得したVHH抗体の遺伝子を試験管内で操作し、結合力、特異性、安定性などを各検査系や使用機器に合致した性能のVHH抗体に短期間で改変する技術である「試験管内進化法」を保有しています。
これは、一般的なランダム変異導入による試験管内進化法に加えて、独自に開発した「CDR3温存法」と呼ぶ試験管内進化法などを駆使し、さらにファージディスプレイ法とイーストディスプレイ法のそれぞれの利点を活用することにより、VHH抗体の親和性、特異性や安定性(100度でも安定)を向上させることに成功したもので、各検査系や使用機器に合致した性能のVHH抗体の迅速な供給を可能にしているものです。
受託案内
VHH抗体の委託を検討されている方は、下記をご参考の上、メールフォーム にてご連絡下さい。
※下記コンテンツ内の画像をクリックしますと、拡大表示されます。
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- STEP01
事前相談
対象抗原情報・抗原数・必要抗体量・納期などの基礎情報をご提示いただきます。
必要がある場合は、情報をご提示いただく前に、秘密保持契約の締結を行いますので、事前相談時にご連絡ください。
必要抗原量は特殊な場合を除き、概ね100㎍ご用意頂ければ十分です。
なお、1回の受託で抗体取得ができる抗原数は、最大3抗原までとしております。
VHH抗体タンパク質の納品形態としては、FLAGタグをはじめとした検出タグ融合タンパク質、ビオチン化タグを使用したC末端ビオチン化融合タンパク質、ヒトIgG1やマウスIgG1など各種Fcタグ融合タンパク質をご提供することが可能です。
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- STEP02
契約
業務委託契約、共同研究契約など、委受託内容とご希望に合わせた形での契約方法をご選択いただきます。
特許権等は相談事項となりますが、共有化の他、権利を貴社に全てお渡しする契約にすることも可能です。
複数回にわたる抗体取得を行う場合は、取引基本契約+都度発注書による、発注時に都度契約書を交わす必要のない手法を取ることもできます。
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- STEP03
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スクリーニング
動物への免疫工程が不要なため早期に仕上がります。
お預かりした抗原に対して2×1010規模のファージディスプレイライブラリーでバイオパニングを行い、結合性クローンの濃縮を行います。
2~3ラウンドのパニング後に単クローン化(~96クローン)し、ELISAにて結合性評価試験、および、特異性評価試験を行います。
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- STEP04
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取得抗体の遺伝子解析
結合性評価試験で陽性のVHH抗体遺伝子について、最大8クローンのプラスミドを調製し、VHH抗体遺伝子配列の解析を行い、配列情報をご提供いたします。
この情報を元にご希望のクローンを、最大3クローン(陽性かつ独立した抗体クローンがこの数に届かないときはその数)まで選択いただきます。
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- STEP05
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リコンビナントVHH抗体取得
ご選択いただいたクローン(最大3クローン)を大腸菌発現ベクターへ組換え、大腸菌への形質転換と培養、His-Tag精製を行います。
また、ご要望の納品形態がある場合には、それに合わせた抗体を取得します。
精製した抗体はSDS-PAGEおよびELISAで評価します。
なお、1抗原に対してご提供できる抗体量は、0.1mgから1mgの間で契約時に指定して頂きます。
またオプションとして追加生産も承ります。
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- STEP06
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抗体および報告書の納品
パニング法によるVHH抗体クローンのスクリーニング結果、取得したVHH抗体遺伝子・予想アミノ酸配列の解析結果、精製した抗体のSDS-PAGEおよびELISA評価の内容を記載した報告書を精製抗体と共に納品致します。
また、取得抗体の高性能化に関する戦略情報を合わせてご提供させて頂きます。
特殊な場合を除き、VHH抗体の保存に最適な冷蔵品扱いで納品致します。
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ご契約前に留意頂きたい事項
●難易度によっては、レアケースではありますが、抗体が取得できない可能性が有ります。
可能性の有無は事前相談時にお伝えします。
●ご契約後、納品までの標準期間は1.5か月から2か月間ですが、難易度によって前後する場合があります。
●受注が集中した際にはお時間を頂くことがあります。
VHH抗体資料ダウンロード
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概要 |
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工事中 |
工事中 |
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